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『いま君に伝えたいお金の話』(村上世彰著、幻冬舎文庫)読了

村上世彰著『いま君に伝えたいお金の話』を読みました。

Prime Readingはいいですね。個人的に啓発本は好きではないので、気になるタイトルがあっても、ちょっとお金を出すにはどうかな?と思ったりするのですが、そういう時にラインナップにあると助かります。

 

 

村上世彰氏は言わずと知れた村上ファンドの創設者です。と言っても、いまの20代以下の世代には、あまりピンとこないかもしれません。だからこそ、いまの若者に読んで欲しい一冊だと思いました。

というのも、我々30代以上の世代からすると、村上氏は「悪人」のイメージが強いです。ご記憶の方も多いでしょう。

 「むちゃくちゃ儲けました」

「金を儲けて何が悪い」

「みんな僕が金儲けをしたから嫌いなんですよ」

非常に衝撃的なメッセージでした。Amazonレビューを見ても、その記憶からくるイメージ・先入観からか、人格を否定するような意見、あるいは揚げ足取りのような意見が多くて、ちょっとがっかりします。

 

先入観を持たずに読んで欲しい。

金儲けが悪いとか悪くないとか、そういった話はさておいて、私は、村上氏の「コーポレートガバナンス」に対して一貫した思いを持っていることに、とても共感、尊敬しています。

村上氏は元官僚。コーポレートガバナンスを日本に普及させる仕事をされていたそうです。

私は、事業会社の実務としてコーポレートガバナンス・コードに対応するための仕事をしています。毎日仕事をしている中でよく思うのは、あと20年、いや10年でも早くコーポレートガバナンスの思想が日本に広まっていれば。

この辺りの影響は大きく変わっていたことでしょう。そして、私がこれまで勤めてきた会社も、もっと発展できていたに違いありません。

コーポレートガバナンスを日本企業に浸透させる」という村上氏のミッションに、私は強く共感しています。

村上氏が本書内で語るのは「正論」です。そして「事実」です。だからこそ、先入観を一度抜きにして読んでみて欲しいですね。

 

企業とは利益=お金を追求するもの。

おそらく、これからの時代は、いま以上に「お金」に対する執着が薄れてくると思います。リアルからバーチャルに移行すると、どうしてもそういう事態が起こるとは思うのですが、ここを乗り越えていかないといけない。しかし、その障壁になるのが、今の中年からお年寄りの世代。

今でも「貯金はどうせ通帳の上の数字」とか「株や投資信託なんて結局はギャンブル」と言って貯金や投資の大切さを理解できていない人は結構な頻度で見かけます。

その一方で「やっぱりネット銀行に預けるのは不安」とか「リスクを負うよりは定期預金がいい」などと言う、金融リテラシーの低い人も多いです。そういった人たちが、実は会社で要職に就いていたりするわけです。

そんな人たちが会社で売上高や利益、利益の還元の話をしても、何の説得力もありません。「企業とはどうあるべきか、何をすべきか」を理解しているとは思えないからです。

 

凝り固まった考えをほぐすのは難しい。

今の日本企業の経営陣の、その中核を占める「ただ、会社から給料をもらって生きてきた人たち」の考え方を変えるのは、今さら無理なんです。

だからこそ若い人に、お金に対する「正論」の考え方を、身につけて欲しいと思うわけです。そうなれば、村上氏のミッションであり、読者の私の理想でもある、コーポレートガバナンスの浸透も、すんなりと受け入れられる世の中になるのかな…などと、私は期待しています。

まずは、先入観を捨てて、ぜひ。いい本です。星4つ。