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ブログ移転しました。

甘いパン屋さんの新聞記事

朝から変な記事を読んで、モヤモヤした一日でした。

mainichi.jp


そもそも問題が多すぎるわけで。整理してみましょう。

 

価格設定が無謀。

 

1個100円(税別)の「100円パン」が看板だった。

 

 

何よりもまず、価格設定が無謀です。

今、この価格で、まともな商品を作って売ってまともに利益を出せる地域は、日本全国どこにもないと思います。「100円パン」のコンセプト自体は素晴らしいと思うんですが、店舗を借りて、人を雇って経営するにはあまりにも無謀な価格だということは明らかです。

 

一般的な食品製造の材料費率って30%程度らしいです(※労務費や光熱費除く。純粋に材料のみ)。
つまり、100円のパン1個売って粗利が70円ってことです。そこから従業員のお給料とか家賃とか、光熱費を払うわけですよ。まぁ無理でしょう。

 

ざっと試算してみた。

感覚的に分からない方もいらっしゃると思いますので、ざっと試算してみましょうか。

 

endless-idomu.co.jp

 

お店の写真を見た感じ、結構広いし、商品数がかなり多いので、完全なワンオペはちょっと難しそう。

朝 7:00~9:00

昼 11:00~14:00

夕 17:00~19:00

これら、計7時間くらいは、2名体制でないと回せないと思います。

時給1,000円×19時間で19,000円(社会保険料等含む)。

家賃は安く見積もって7万円として、月25日営業だと日当たり2,800円。

水道光熱費はパン屋なので高そう。5万円として日当たり2,000円。

その他、火災保険料とか制服代とか諸経費を諸々入れて、必要経費は日に28,000円ぐらい、といったところでしょうか。

これ、1日400個パンを売らないと利益が出ない計算です。東京や大阪ならまだしも四国の徳島県、しかも小松島です。

人口5万人にも満たない町で、時間当たり30~40個のパンが、毎日コンスタントに売れていくとは到底思えません。

平日とか日曜とか関係なく、そもそもの計画に無理があります。

 

人員計画が弱い

日曜休業のきっかけは県内の3店舗で9人いたインドネシア技能実習生の帰国だった。

 

外国人技能実習生を、実質的に低賃金の労働者として扱っている企業は多いですが、コロナ禍で実習生の新規入国ができなくなることって、2020年初頭から予測できていました。

残念ながら、手を打つのが遅過ぎます。

 

日本人アルバイトを確保して営業を続ける方針だったが、難航。

 

日本中すべてが人手不足みたいな言い方をする人がいますが、実際はそんなことありません。現に、給料の高い職場や労働環境の良い職場には人は集まってるわけですから。

でも、次の一文でそりゃー駄目だわ、と思いました。

 

パン焼き作業を担当し、1カ月の平均労働時間は約170時間と、フルタイム並みの戦力。

 

ここに書いてある条件で、同じような人材を探すのであれば、難航するのは当たり前です。

 

最低賃金に近い給与で、パン焼きという肉体労働を長時間続けてくれて、かつ、日曜も出勤できるような人は、今の日本にはいません。

甘すぎる。

 

経営戦略がおかしい。

「本当は店を開けたいですよ。平日より売り上げの良い週末ですから……」

 

これはあくまでも新聞記事。発言の一部分が切り取られています。普通の感覚の経営者ならこういうことは言わないよね、とは思うのですが。

売上が上がるのと、利益が良い、つまり、儲かるかどうかは別です。

 

羽ノ浦店の土日2日間の売り上げは平日5日間に匹敵する。

 

もし、上の文章が事実であれば、土日に店を開けて平日閉めた方が絶対に効率がいいです。

つまり、やってることが逆なんです。戦略を思いっきり間違っている。

というのも、毎日パンを食べる日本人って確か全体の6割くらいなんですよね。で、そのうちさらに8割くらいの人が、パンを食べるのは朝食だけらしいです(ソースは定かではないですが)。

日本人の主食はやっぱりコメなんですよ。毎日パン屋に行ってパンを買う、という人はそもそも少ない。

ということは土日だけ、あるいはせめて金土日だけの営業にすれば、そこに一週間分に近いお客さんを集中させられるはずなんです。

本当にお店自体に人気があれば、話ですけどね。

人が集まらない理由は何か。

人手が足りないから日曜を閉めざるを得ない、みたいな言い方してますけど、ちゃんとしたお給料、例えば、時給2,000円払えば日曜でも来てくれる人は必ずいます。このご時世ですから、1,500円でも応募は来ると思います。

平日開けないといけない理由は色々想像できるんですが、「平日だけ働きたい」という従業員を雇い過ぎているというのがあるんじゃないですか。これは推測ですけど。

 

いい時給が払えないのは、まずは1個当たりの利益が少ないから。

そしてもう一つは、売上の伸びない日の固定費がかかり過ぎていることが原因でしょう。

日曜に開けたいのなら、儲からない平日の固定費を徹底的に下げるのが「経営」です。

 

ちょっとだけ批判を。

最後に一つだけ、全力で批判をさせてください。

 

最低賃金の目標を掲げるのは構わないが、業種や地域によって出せる金額は異なる。さらに生産性の向上を上回る賃上げを求められると、利益率の低下につながる恐れがある」

 

自分の経営の甘さを棚に上げて、今現在、実際に従業員を雇っているお店の経営者が、平気でこういうコメントを出せるのがちょっと信じられません。

外国人技能実習制度を利用(悪用?)して、薄利多売をやっている。そして、賃金の安い外国人が雇えなくなった途端に、利益が出なくなって閉店、休業。

いざ求人をかけても日本人労働者が集まらない。

 

このお店って、最初から、真っ当なビジネスとして成り立っていない可能性が高いです。

生産性の向上どころか最初から削れるところなんてないのでは。

 

人が集まらないのはなぜか。それは、ほかの働き口と比べて魅力がないからです。

そこで働いても大して稼げないし、やりがいもないし、楽しくないからです。

それ以外に理由なんてないんですよ。まずは、この事実を経営者が自覚することが必要じゃないかな、と思います。

 

こんな記事書く毎日新聞も落ちましたな。

合掌。