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兄弟げんかについて

子どもの頃に、殴り合いや格闘技を経験せずに育ってきた人(妻です)に、兄弟げんかについて話す機会がありました。結果的に、ちゃんと伝わったのかわからないけど。

「今まで平和に暮らしてきて、かつ同性の兄弟もいなかったので、兄弟のケンカをどう扱ったらいいのか分からない」という方も多いかと思いますので、何らかの参考になればと思い、まとめてみます。

あ、念のためですが、多分に私の主観が入っています。それだけはご留意願います。

 

そもそも幼い頃の兄弟げんかは「暴力」だと思う。

ケンカは経験者同士が、同じ階級で戦う格闘技とは違います。誰がどう見ても、体格や腕力に差のある人同士が戦うのはケンカではなく、ただのいじめ、暴力です。

だから、幼い子ども同士のケンカって、大抵が単なる暴力なんですよね。年齢差相応の体格差のある兄弟なら、お兄ちゃんが弟に勝つのは当たり前です。

身長120cmのお兄ちゃんと、身長110cmの弟の殴り合い。大人から見れば、大差ないと思うかもしれません。しかし、大人に置き換えてみると185cmと170cmが殴り合いをしているようなものです。

170cm vs 185cm


参考:http://www.mrinitialman.com/OddsEnds/Sizes/compsizes.xhtml ※このサイト素晴らしい!

 

この絵を見れば、格闘技経験があろうがなかろうが、185cmが圧倒的有利だということがわかるでしょう。でもこれね、絵だとまだマシなんです。自分の1.1倍ある人と向かい合って殴り合いをするのは、かなり怖いですよ。ちなみに私172cm58kgなんですが、190cmの人と戦うのはまず無理です。

だから、兄弟のケンカというのは、そもそも圧倒的なハンディがあると理解しないといけません。お兄ちゃんは、弟に手加減しないといけない。絶対に。

 

ケンカにはルールが必要。

ケンカは、本当の○し合いとも違います。ルールが必要です。

格闘技は同じ階級(=体重)で、同じくらいの能力の選手同士が戦います。でも、ケンカはそういうわけにはいきません。兄弟げんかは、毎回ハンデ戦です。そもそも強い方が弱い方に合わせてやらないといけません。友達とのケンカはいろんな相手と突発的に起こりますが、その場合でも、強い人から弱い相手にケンカを売ってはいけません。

また、もし弱い相手からケンカを売られて、買わざるを得ない状況だったとしても、強い方から手を出してはいけない。理不尽かもしれませんが、これは絶対的なルールです。

ボクシング元世界チャンピオンの竹原慎二さんとか、総合格闘家朝倉未来さんとかのYouTubeチャンネルで、素人喧嘩自慢を制裁、みたいな動画がちょっと流行りましたね。あんな感じで、相手から「殴られても構わない、本気で来いよ」と、どれだけ煽られたとしても、強い方からは手を出さない。それがルールです。そうしないと「強者>弱者」の構図がある以上は、ただの一方的ないじめ・暴力になってしまうんです。

あ、ちなみにこれ、大人同士でも当然のルールですよ。これが守れない大人は、ただのパワハラです。

 

ルールを理解できるまで、大人が教え込む。

まぁそうは言っても、このルールは、子どもはなかなか理解できません。当然です。おちょくられたら腹が立つし、たとえ相手がふざけて叩いてきても、痛かったら思い切り叩き返します。それが普通です。

ここで大人の出番です。これは兄弟の場合に限るというか、兄弟がいる家庭の特権と言ってもいいんですが、兄弟のケンカは、すぐに止める必要はありません。しばらく殴り合いをさせてみる。ケンカを止めるのは、一方が明らかに劣勢になった時。つまり、お兄ちゃんが思い切り殴り始めたり、上から覆いかぶさった時です。こうなったら弟は絶対に反撃できない。

これは家庭によって違いがあるべきだと思います。うちの場合は、弟がそれほど好戦的ではないので、泣いて口で暴言を吐き始めます。それに腹を立てた兄がまた弟を殴り始めてしまうので、弟が泣いて兄に立ち向かっていった時もゲームオーバーです。そこで止めないと、兄は本当に思い切り弟を殴ってしまう。弟はケガをするか、兄の大事な物に当たって壊してしまう。

やり過ぎた方を叱ることは絶対に必要。可能であればそうなる前に、大人が程よいタイミングでケンカを止めるべきです。同じことを何度も繰り返していると、本人たちは「ここでやめないとな」と理解します。むしろ、大人が教えてやらないと、いつまで経っても弟がケガするか、兄の物が壊れされるかで、毎度悲惨な結果になります。

 

他人に同じことをしないために、厳しくする。

妻は、私にいつも「お兄ちゃんにばかり厳しい」と言いますが、その通りです。本気で弟に攻撃をしていたり、自分は遊んでいるつもりでも、弟にものすごく痛い思いをさせていた時は、兄だけを叱ります。

なぜなら、ほかの家の子にそんなことをすると、取り返しのつかないことになるからです。こう言うと、自分の保身のようですが、その通り。というのも、私自身、小学校高学年の時に、他の家の子とのケンカで歯が欠けたことがあり、それが苦い思い出になっているからです。

詳細は割愛しますが、なんか痛いわーとケンカ後の歯を母親に見せたところ、大激怒。「いくら子供のケンカとは言え、後に残るケガを負わせておいて、謝罪や報告のない学校になんか行かんでもええ!」と。

その後の経緯はちょっと覚えてないんですが、ケンカ相手とその母親、担任の先生まで家に謝りに来て、さらに学校でも聞き取りがあったりして、結構な騒動になったのは覚えています。欠けた歯は治しましたし、相手の子とは中学校まで同じだったんですが、すっかり気まずくなってしまい、その一件以来、話すことはありませんでした。

 

今から30年前でそんな感じだったので、これがもし現代で、うちのオカンが、よりモンスターなペアレントだったとしたら、大問題になっていたことでしょう。もしかしたら裁判沙汰とか、関係のない先生の処分とかも起こり得る事態だったと思うと、うかつに他の家の子とケンカはさせられません。他の子よりもキレやすい子、というのは必ずいるので、特に注意しています。

 

他人の痛みはわからない。

自分より力の強い人に殴られたことのない子供は、殴られた人の痛さをわかりません。そんな子供に「他人を殴ってはいけないよ」なんてこと、言ったって伝わるはずありません。だって殴られたことないし、痛さがわからないんですもの。当たり前です。

でも、これって大人でも同じ。殴られたことのない人が、人を殴ったって、どんな痛みがあるのかなんてわからない。だからやり過ぎてしまう。

今の時代、絶対に体罰はダメです。でも、子どもが他人に与えてしまった痛みがどれだけのものなのかを、身をもって体感させることは必要だと思いますし、その行為を体罰とは言わないのではないか、と思っています(注:ここは人によってそれぞれ考え方があるし、センシティブな問題なのは理解しておりますので、あまり深くは突っ込まないようにします)。

私自身は、だからこそ、もし兄弟げんかが始まったら、終わるまでやったらいいと思うし、弟にも、やられたらやり返すように、しっかり伝えています。一方的に兄が弟を攻撃していたら、兄を全力で叱ります。鬼になって心の底から叱ります。それぐらいしないと、殴られた人の痛みって絶対にわからない。

 

子どもはケンカの中から学ぶことがたくさんあります。親はそれを簡単に止めないようにしないといけません。でも、当然どちらかがやり過ぎた時は止めないといけない。自分がケンカをせずに育ってきた人は、なかなか難しいかもしれませんが、そこはもう、慣れしかないです。時には心を鬼にする必要があると思います。

妻には「そこまで感情的になって言う必要はない」と言われるんですが、それも違う。ただでさえ言葉では伝わらない思いなのに、こちらが感情を出して語り掛けないと、相手に伝わるはずがない。うわべだけの言葉でごまかそうとするのは、(最近の?)大人の本当にダメなところだと思います。

 

ここからは余談。大人のほうが弱いよね。

ここからはちょっと余談です。いじめをする子に「いじめられた人の気持ちが分かるか!?」なんて美しいセリフ吐いたって、全く効果がないですよね。だって、わかってたら普通そんなことしないし。言っても無駄、って考えたらすぐにわかる話。でも大人の方がこのことを理解していない。理詰めと優しい気持ちで何とかしようとする。

いじめや暴力は理詰めと優しさじゃどうにもならないんです。

毎日いつの間にか弁当にゴミが混ぜられている生徒に「いつか終わる日が来るよ、だから今は我慢しろ」なんて言えるか?

パワハラ上司?そんなの労基にチクっちゃえばいいじゃん。嫌なら辞めたらいいじゃん」なんて呑気なアドバイスできるか?

 

残念ながら、いじめや暴力には、自分一人の力では勝てません。集団や組織を動かすか、その場から物理的に立ち去る・逃げるしか解決手段はないと言ってもいいと思います。それは、もう仕方がないのかもしれない。

でも、家庭教育において本当に大事なのって、子どもがそのいじめや暴力の主犯にならないように、加担しないように育てることじゃないでしょうか。

力の強い者は、弱い者を守る。弱い者は、強い者の足りない部分を補う。それが家庭のルール、社会のルールだと教えることが教育であり、倫理であると思います。

 

と、熱く語りましたが、そこまで大人が深く考えなくても、ほとんどの子どもは「いじめはよくないよね」「それパワハラじゃん」ってよく言います。事なかれ主義、見て見ぬ振りをして生きてきた大人の方が、はっきり言って子どもよりも弱い

 

ちょっと思い出話になるのですが、自分が勝てる相手ばかりとケンカする子いますよね。私を昔いじめていたのはそういうタイプの子でした。自分より弱い子ばかりにコソコソちょっかい出して、キレたところを反撃するタイプのいじめっ子です。

こういうタイプの子って、自分から手を出さないから、怒られにくいんですよね。ケンカは基本的に先に手を出したほうが負け、というのを理解した上でやってる子が多い。俺からは手を出してない、殴られたからやり返した、と。むしろ、俺らの仲間がやられていたから俺は助けただけだ、と。

その子もクラスの中では「気は優しくて力持ち」的なガキ大将の立ち位置に、大人からは見えていたと思います。でも本当は、標的にされたくなくてヘコヘコする奴らを手下に従えた、ただ腕力が強いだけで弱い者いじめのクソ野郎なのにね。

でも、大人になって、大人からの目線だけで、そういう子の本性を見破ることができるかどうか考えると、難しいと思います。当時はずっとチクショウ、と思ってましたけど、ちゃんと信頼できる大人に声を上げるべきだったな、と反省しています。チクったとか言われるんだろうけど、殺されるほどのことはなかっただろうしなぁと。

 

終わりに:大人も子供も、ちゃんと痛みをわかる人になるべき。

最後になりますが、兄弟のお子さんのいる方は、しっかり喧嘩をさせておくべきだと思います。また、兄弟がいてもいなくても、子どもは一度は必ず格闘技を習わせるべきです。その時は、親も一緒に体験してみるべきです。

自分よりも強い相手がいること。人は殴った時も、殴られた時も痛いこと。強い人は、弱い人を相手にする時は、必ず手加減をすること。

これらをしっかり教えられる大人でないと、子どもは「他人の痛みの分かる人」すなわち「他人の気持ちが考えられる人」には育たないと、私は思います。

 

今回の記事は偏った考え方が多いかもしれません。でも、私は様々なトラブルに巻き込まれながらも、40年生きてこれました。兄弟げんかの相手としてしっかり鍛えてくれた兄と、ケンカで負けて泣いても甘やかさず、厳しく優しく育ててくれた親に感謝しています。