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『バブル 日本迷走の原点』(永野健二著、新潮社)読了

永野健二著『バブル 日本迷走の原点』を読みました。

私の冬休みの課題図書です。

 

(上は文庫版です)

 

日経新聞の記者だった著者が

当時の取材経験を基に

バブルの時代を生々しく描いています。

 

私は1980年代前半生まれ。

バブルの「うまみ」を全く享受することなく

ただ、不景気のどん底

デフレの世界で生きてきた人間です。

 

だからこそ

日本をこんなにダメにした

きっかけになった「バブル」とは

一体何だったのか?

という問いから逃げていてはいけない。

そう思い、この本を読みました。

 

結論から言ってしまうと

著者の体験と主観に基づく記述が多いため

「ほんまかこれ?」

と思ってしまう箇所も時々ありましたが

 

「日本のバブル」をざっと理解するには

ボリュームも程良く

とてもいい本だと思います。

勉強になります。

 

その一方で、こういう

「バブルの振り返り本」というのは

当時、多少なりとも良い思いをしてきた人か

あるいは

財テクに手を出さなくてよかった」

と、その後の壊滅的な株安・土地安を見て

安堵している人が

今の時代に読んで、昔を懐かしむ本かな、

という気分にもなりました。

 

結局「思い出は美化される」わけで

そういう書きぶりが目立つのが

ちょっとマイナスポイントでした。

 

バブル後の不景気しか味わっていない、

バブルで損しかしていないという感覚でいる

我々か我々より若い世代には

「だからなんやねんお前ら全員責任取れよ」

という、ちょっとモヤモヤした気持ちが

残ってしまう本であります。

 

この本に出てきた多くの企業、人も、

そして著者も

ある程度はバブルの「うまみ」を

味わったわけですし。

いわば同罪やな、と

どうしても思ってしまいます。

 

バブルから我々世代は何を学ぶか。

ひととおり読んだうえで

私たちはバブルから何を学ぶのか。

 

それは

ユーフォリアに陥るのは愚である

ということなのかと。

 

結局、日本だって

バブル経済を経験して死にかけたくせに

ITバブルでまた痛い目見てるし

インバウンド特需だってある種のバブルやし

ついこないだも

仮想通貨バブルに踊らされ

アベノミクスでせっかく元に戻った資産を

またすっかり溶かしてしまった人が

かなりの数いたわけで。

 

すべての人が、みんな儲かることなんて

このグローバル経済、

格差社会では絶対にありえない。

 

そして

 

「やらないと損をする」という

クソみたいな煽り文句に乗るのはバカ

そう言う人こそ、大抵何も分かっていない。

 

この2つのことだけでも

頭のいつでも引き出せるところに

置いておくと、結構、心穏やかに

幸せに暮らせるような気がします。

 

物語としても、そこそこ楽しく読めますので

バブルを知らない世代の皆さんにも

おすすめします。星3つです。