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『フルキャリマネジメント 子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得』(武田佳奈著、東洋経済新報社)読了

2019年出版の本。

図書館で借りて読みました。

著者は、野村総合研究所のコンサルで

ご自身も「フルキャリ」です。

すごく面白い本でした。

 

なぜこの本を今読んだのか。

私は、前に勤めていた会社で

子育てしながら働く部下を

持っていました。

 

私自身も子育てしている父親で

部下も初めての出産・育児だったので

お互い情報共有、共感し合いながら

うまくやれてるな、と

自画自賛していたのです。

 

が、私が転職して程なく

その部下も転職したと聞きました。

マネジメントやキャリアプランニングで

何かミスったかなぁ…と

少しモヤモヤが残っていました。

 

それから数年経ち。

いま勤めている会社も

ジェンダー平等を目標に掲げました。

そこまではいいのですが

 

「女性の採用を増やす」?

「女性専用の職種を設ける」?

「時短勤務に制限をつけない」?

 

などなど

男性の私でも疑問に思うような

施策が計画に挙がっています。

 

これって本当に女性が望んでること?

そして、すべての女性社員を

「女性」というカテゴリに括るの?

 

と、これまたモヤモヤしていました。

そこで手に取ったのが本書です。

 

この本の良いところ。

本書は、子育てしながら働く女性と

その上司(管理職)に対する

アンケート結果がベースになっています。

 

ですので、巷にありがちな

「著者の推論」または「著者の体験談」

だけで語られた本ではありません。

いいですね。

 

また、時々出てくる詳細な聞き取り。

個人の意見として書かれているものの

その意見がすごくリアリティがある。

「あ、もしかして(昔の部下は)

 こんなこと考えてたのかな」

と思うようなことばかりです。

 

最近、本当に増えた

「学者や有名人の自分語り本」とは

一線を画す、説得力のある本です。

 

特に印象に残ったところ。

第1章(5)働く女性自身も分かっていない「これから私はどうしたい?」

第3章(3)本当は家庭理由ではなく、仕事が理由で職場を去るフルキャリ

の2つの項です。

 

成長や貢献を実感できずにいたり、周囲に迷惑を掛けているという不安感ややるせなさを感じていたりすることこそが、両立の負担の実感値を実際以上に高くし、その結果、仕事のモチベーション低下や離職というフルキャリの決断を招いてしまう(p.86)

驚くと同時に、なるほどな、と。

非常に鋭い考察です。

 

私自身、反省する点が多い。

私は当時、子育て中の部下に対して

「体力的・精神的・時間的にやれる範囲で

 最大限の成果を出しましょう。

 私もバックアップしますから」

と、言っていましたが

この本を読んだ後で

言葉も配慮も足りなかったと

反省しました。

 

「体力的・精神的・時間的にやれる範囲」

というのが、一体どれくらいなのか

曖昧なまま仕事を進めていました。

コミュニケーションが

足りていなかったと思います。

 

そして「バックアップ」という言葉が

「迷惑をかけているのでは…」という

気持ちにさせていなかったか

と、今さら反省しています。

困った時に助け合うのは

別に育児中だろうとそうでなかろうと

チームプレイなら当たり前のことなのに。

 

そして、私が勝手に

「時間に制約があるし

 子育てにも体力を使うから

 今までの仕事量はこなせないよね」

という前提を作ってしまっていたこと

何よりも間違いでした。

 

優しく気遣う振りをしながら

「それでも、できる限りがんばってね」

と、実はものすごく

無責任な態度を取っていたわけで。

申し訳ない気持ちになりました。

 

個人の成長や組織への貢献が

きちんと感じられるように

マネジメントしておかなければ

ならなかったです。

 

今はどうなんでしょう。

そういえば、かつての部下は

転職して、それまでの経営企画から

職種変更したそうです。

頭の回転が速くて発想も面白い

優秀な人だったので

どんな仕事でも上手くやれると思います。

 

当時、どう思っていたかと

なぜ経営企画の仕事をやめたのか

ぜひ会って話を聞いてみたいですね。

そして願わくば

次の機会に活かしたいです。

 

終わりに。

繰り返しになりますが

この本は最近流行っている

「女性活躍推進本」とか

「学者や有名人の自分語り本」

とは一線を画す、良著です。

 

女性活躍を謳う大企業のみならず

日本企業のすべての管理職が

読むべき一冊ですね。星4つ。