広報担当者がいない企業の悩み
日本のどこかにこんな会社があるらしいです。
その会社には広報担当者がいません。
退職でいなくなったわけではありません。記録に残っている限り、広報担当が置かれたことがないのです。
広報担当者がいない会社はこんな感じ。
客先向けのカタログ等の販促物は、営業部門が作って配ります。
でも、新商品の宣伝広告だけは開発部門が担当しています。
だから、新商品のことは、営業部門に問い合わせてもわかりません。
会社のWEBサイトはシステム部門が作っています。
でも、営業部門や開発部門は、情報を社内で共有していません。
なので、新商品の情報が自社サイトに掲載されるのは、いつも発売されてから数日~数週間後。
社外からの問い合わせ窓口は総務部門。
でもWEBサイトの編集や更新は、システム部門が担当しています。
なので、総務はWEBサイトの内容に関するお問い合わせには答えられません(新商品が出たことも当然知りません)。
メディアからの取材依頼は、各部門の担当者が窓口になっています。
だから、経営企画担当者が専門誌を読んでいると、全く聞いたことのない自社の経営方針がインタビュー記事に載っているのを見つけることがあります。
管理もへったくれもない状態を変えよう、と。
広報担当がいない上に、印刷、WEB管理、メディア対応を変に内製化しているので、各部門が好き勝手に社外に広報物をばらまける状態になっています。
これはまずいだろう、と立ち上がったのが経営企画部門。広報は基本、総務部門が担当すべきなので、総務に広報専任者を置いて欲しい、と経営企画はお願いしたものの、「人も金もない」という宇宙でいちばん手っ取り早い言い訳を盾に、総務部門は責任逃れ。
しかし、何の統制も取れていないこの状況はさすがにまずい。「対外的に出す情報は、経営企画を一度通してください」と、社内にアナウンス。
3年にわたる地道な活動の結果、なんとか公表前に情報は集まるようになりました。
明らかに会社の方針と異なるものを勝手に社外に出されることはなくなってきた(時々あるけど)のですが…
今度は「経営企画がいいって言ったよね問題」が散発するようになりました。
「経営企画がいいって言ったよね問題」とは何か。
例えば営業部から「こういうことを書いた資料を、社外向けに配るけど問題ない?」という確認が来ます。経営企画がざっと目を通して「このレベルならいいですよ」と返したところ、数日後、経営企画が見たものとは全く違う広報物が社外に出ている。
経営企画があわてて「これはまずいですよ!誤字脱字だらけだしデータも違うし」と、取り下げをお願いすると
営業部から「え!?だって事前に経営企画室がいいって言ったじゃないですか!」と言い返されます。
あるいは、開発部から「チラシにこういうことを書きたい」という確認が来て「ほぼ問題ないです。でも、この2行目の言い回し。意味が伝わりにくいと思うんで、ここだけ直してもらえますか?」と、返したところ、数日後、2行目だけがより不明瞭な文章に書き替えられ、結果として、全体が「ちょっと何言ってるかわからない」状態になっているチラシが社外に出回っている。
経営企画があわてて「これはまずいですよ!ちょっと何言ってるかわからない」と、取り下げをお願いすると
開発部から「え!?だって事前に経営企画室がチェックして、"2行目だけ直したらOK"って言ったじゃないですか!」と言い返されます。
これが「経営企画がいいって言ったよね問題」です。
自部署でチェックしなくなる。
「最終形を経営企画に見せればOK」というルールだったのが、いつの間にか「経営企画に一回見せておけばOK」と解釈されてしまっているんですね。
一方で、素案レベルというか、素案にもまだ至らない裏紙の落書きレベルの内容を「チェックして欲しい」と持ってこられることも増えました。
よくあるケースとして…
「あのー、このチラシの案ですけど、当社の社名がどこにも書かれてないですけど、いいんですか?それと"ティーバッグ"が"ティーバック"、"Last"(最後)が"Lust"(性欲)になってますよ。あとこの文章、全体的に、ちょっと何言ってるかわからない。」
自部署内で一回チェックをかけるだけで簡単に見つかるであろう、誤字脱字レベルのミスもそのまま持ってこられます。つまり経営企画が校正担当化してしまったわけですね。
そして、あきらめ。
経営企画も、初めは真面目にチェックをしていたものの、あまりに頻繁に繰り返される
「クリ」⇔「クソ」レベルの間違いのチェックに嫌気がさし、もういいです。うちで文章を書きますわ。と諦めて、現在に至ります。
このまま経営企画が広報担当になってしまうのでしょうか。
次回予告。
次回「広報担当者がいない企業の悩み」、「プレスリリースはコストゼロじゃない」の巻!乞うご期待!(たぶん書きません)
※今回の記事はフィクションです。フィクションであって欲しいです。